書評:『「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま』

山田先生による第2回講演会の準備として、今回は『「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま』の書評を紹介します。
ASRIの上石君が作成してくれました。

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま

■(要約)
婚活という言葉は性役割分業の限界を訴える目的で誕生した。婚活が結婚に結びつくためには、男女とも結婚後の共働きを覚悟し、結婚に対して経済生活か恋愛感情のどちらかを諦める必要がある。

■婚活は性役割分業の限界を訴える目的で誕生
女性が収入の高い男性を求める一方、安定した収入を得る若年男性が減少していることが未婚化の原因である。そのため、未婚化を防ぐには、男女とも結婚後の共働きを覚悟し、女性は結婚相手の男性に期待する経済水準を引き下げ、男性は経済力以外の魅力を高める必要がある。このような問題意識から、結婚を目標として積極的に活動することを「婚活」と名付けると、この言葉は様々な領域で使用されるようになった。婚活が社会的流行現象となった背景には、未婚者の絶対数の増大、結婚に焦り出す未婚女性の増加、未婚者の将来生活に対する不安、という3点が挙げられる。婚活という言葉の普及によって、待っていても理想的な結婚相手が現れないという現実、妻子を養って豊かな生活を送ることができる男性の激減という現実が明らかになってきた。

■婚活の流行は二つの時期に分けられる
婚活の流行は二つの時期に分けられる。リーマンショック以前の第一期には、結婚願望のある女性や未婚の子供を持つ親を中心に、性役割分業の限界や婚活の必要性が認識された。半面、リーマンショック以後の第二期には、婚活が本来の定義とは異なる方向に解釈され、不況下でも安定して高収入を稼ぐ男性を女性が勝ち取る活動に変化した。第一期は恋愛のような結婚にこだわるが、第二期はこだわらないのが相違点である。また、女性が結婚による生まれ変わりに、幸福な結婚という理想にこだわっているのが両者の共通点である。恋愛のような結婚を諦めた第二期の女性達は、現実主義者のように見えるが、宝くじに当たるかのように良い条件の男性との結婚に固執している点では非現実者である。婚活が結婚に結びつく活動となるためには、女性の生活が結婚相手によっていかようにも変化してしまうという現状を変える必要がある。

■結婚では経済生活か恋愛感情を諦めるべき
また、結婚に期待を積み過ぎていることも、日本で結婚したくてもできない人を増やしている原因である。日本では、依然として、結婚後の生活は男性の収入で支えるという意識が根強い。だから、結婚後の生活に不安が残るため、収入が安定しない男性は結婚してとして選ばれにくい。一方、恋愛を基礎とする結婚こそ唯一の正当な男女関係である(ロマンチック•ラブ)という考えも依然として根強い。つまり、日本では経済生活と恋愛感情という結婚への積み荷がまだ降ろされる状況にはないのだ。積み荷があまりにも重くなった現在、どちらかの積み荷を降ろさなければならない。その際、欧米では経済生活という積み荷を降ろし、中国では恋愛感情という積み荷を降ろす方向で対応しているように見える。しかし、日本ではこのまま重くなった積み荷を降ろせないために、結婚難が続く可能性が高いのではないかと思われる。


興味を持って下さった方は是非講演会にお越し下さい!