遅くなりましたが、



無事に第4回目の講演会も無事に終わりました。
第3回目とほぼ同じくらい、多くの方々が参加して下さいました!
ありがとうございます。

これで一旦は講演会:少子高齢社会の未来図は終了となります。
タイミングを見て、スピンアウト企画的に個別テーマで講演会を開くかもしれませんし、今回の4回分の内容をまとめたレポートを書くかもしれません。
そのあたりの予定はまだ柔らかい状態ですが、また何か仕掛けていきたいと思っています。

引き続き、当ブログ自体は残しておきます。
何か進展がありましたら、更新+facebookで告知いたしますね。

最後になりますが、ご参加いただいた方々、後ろからサポートして下さった東京自由大学のメンバーの皆さん、そして講師を務めて下さった4名の先生、本当にありがとうございました。

「コミュニティ」という言葉は文脈によってワクワク感が違うのはなぜだろう

小生は友人と家をシェアして住んでいて、本棚は各々が持ち寄った本であふれています。
ふと、雑誌のみを集めたコーナーが気になる雑誌が。

「こころ 2012 vol7」特集「コミュニティ」が文化をつくる
「なぜコミュニティなのか。どうしていま、文化なのか」広井良典

おぉ!タイムリー。
早速中をのぞいてみると、
●人類史の大きな流れの中で人々が情報をどのように扱ってきたのか
●コミュニティがその中でどう関係してきたのか
について駆け足でまとめられていました。

高齢化社会というテーマの中で「コミュニティ」という言葉を聞くとどうしても、公民館とか町内会など若手世代から見るといまいちパッとしないイメージを連想してしまいます。
それが、インターネット、フェイスブックといったテーマの中で「コミュニティ」という言葉を考えると、勢いを感じますよね。
違う単語ですが、セス・ゴーディンの「トライブ(部族)」といった言葉も頭に浮かび、いよいよワクワクしてきます(*)。

こうした捉え方の違いは、きっと創造性、クリエイティビティを前者からはいまいち感じられないからなのだろうと、小生自身は思っています。

そろそろおちですが、こうした中で広井氏は「創造的福祉社会」を提唱されています。
さてどんな「創造的」な仕組みが福祉社会に隠されているのか気になってきませんか?
お後がよろしいようで。



*セス・ゴーディンのトライブはもっと組織論よりの話で、ちゃんと議論をすればコミュニティとは別のレイアーの話。レイアーは違えど人の集合という意味では同じだろうと程度で紹介しております。
*組織とコミュニティは何が違うんだ?という話もありますが、それはまた別の機会で。

こころ 2012年 vol.7

こころ 2012年 vol.7

トライブ  新しい“組織”の未来形

トライブ 新しい“組織”の未来形

おかげ様で講演会ブログが3000PV超えました

おかげ様で講演会ブログが3000PV超えました。
固めのテーマで3か月かからずに届いたのは少し驚きです。

こつこつと講演会メンバーで手分けしてコンテンツを作っていました。
「単に参加して終わりじゃなくて、予習・復習に役立つブログ」をテーマに作っていますので、是非講演会に参加された方は時間をおいて読んでみて下さい。

いよいよ当講演会も9/28の第4回目でフィナーレです。
ご都合が付く方は是非東京自由大学@神田にお越し下さいませ

http://d.hatena.ne.jp/skseminar/20120617/1339945062

書評:『創造的福祉社会』

09/28に開催する第4回目講演会にむけた予習エントリーです。
今回は講師である広井良典先生の著書『創造的福祉社会』をとりあげます。

■100字要旨
資本主義の歴史の中で、社会的セーフティーネットは事後から事前へと三段階で進化した。生産過剰によって失業が生じ、そこに貧困や格差が生じている現代においては、過剰の抑制と富の再分配が必要である。

■社会的セーフティーネットは事後から事前へと三段階で進化
資本主義の歴史の中で、社会的セーフティーネットは三段階で進化した。第一段階として、それは市場経済から落伍した人への公的扶助もしくは生活保護という事後的救済策から始まった。続いて第二段階として、工業化が本格化した19世紀後半、大量の都市労働者の発生を前にして、雇用労働者が事前に保険料を払って病気や老後等に備える仕組みとしての社会保険という、より事前的なシステムが導入された。しかし、20世紀に入って世界恐慌に直面し、社会保険の前提をなす雇用そのものが確保できないという事態に陥ると、第三段階として、ケインズ政策という、市場経済へのより積極的な介入(公共事業や社会保障による再配分を通じた需要喚起と、それによる経済成長そして雇用そのものの創出政策)が開始された。以上をまとめると、分配の不均衡などの危機に瀕した資本主義は、その対応を事後的で周辺レベルのものから、事前的で根幹レベルのものへと拡張してきた。

■現代の貧困に対処するためには過剰の抑制と富の再分配が必要
かつての時代においては、生産の総量が人々のニーズに追いつかず、そこに欠乏や貧困が生じていた。しかし、現在においては、むしろ生産過剰によって失業が生じ、そこに貧困や格差が生じている。経済が成長してモノがあふれる時代になったため、成長の時代には自明であった雇用の総量が増加を続けるという前提が成り立たなくなり、雇用に関するある種の椅子取りゲームが生じているのだ。象徴的に言えば、欠乏による貧困ではなく、過剰による貧困という新たな局面に突入している。ここでは過剰という富の総量の問題と、その分配という問題が絡まっているのであり、そうした過剰の抑制と富の再分配という二者を私達は同時に行っていく必要がある。過剰の抑制に関しては、時間の再配分政策や労働集約的な分野への労働シフトなどを通じて、成長に依存しない定常型社会ともいうべき社会、脱成長型の社会モデルを実現していくことが求められている。

■富の再配分に関しては、システムの上流にさかのぼった社会保障が不可欠
富の再配分に関しては、システムの根幹ないし上流にさかのぼった社会保障が不可欠である。具体的には、第一に、人生前半の社会保障(教育支出の拡大、若年基礎年金等)が必要だ。なぜなら、最も失業率の高い層が若年層であることから分かるように、かつては退職期ないし高齢期に集中していた生活上のリスクが人生の前半に広く及ぶようになっているからだ。第二に、ストックに関する社会保障(住宅保障の強化、土地課税の強化等)が必要だ。格差問題の議論の中心になっているのは所得、つまりフロー面での格差であるが、資産あるいはストック面においての格差の方がより大きいためである。第三に、コミュニティそのものにさかのぼった対応と政策統合(中心市街地の活性化、コミュニティビジネスへの支援等)が必要だ。なぜなら、一次的なセーフティーネットであるべきコミュニティが崩れてきており、コミュニティそれ自体の再構築がセーフティーネットの本質的な重要性をもつからだ。

■斬新な点
成長の時代とは、GDPの拡大といった大きなベクトルが支配的となり、各地域が一つの方向に向かい、すべてが「進んでいる-遅れている」という一元的な座標軸に位置づけられるという、時間優位の時代であった。しかし、私達が迎えつつある成熟あるいは定常化の時代においては、人々はそうしたベクトルから解放され、むしろ各地域の風土・伝統・文化といった固有の価値や多様性に関心が向かうという空間が前面に出る時代となる。それは飛行機に例えると、市場経済の拡大とともに地域コミュニティや場所といったものから一貫して離陸してきた人々が、もう一度そうしたところに着陸していく時代でもあろう。つまり、大きな時代認識としては、グローバル化の先にローカル化というより究極的な構造変化が存在すると考えるべきである。各地域における具体的な実践とともに、そうした方向を支援する総合的な公共政策が求められている。

第4回:「創造的な福祉社会に向けて」

いよいよ当企画のフィナーレです。

○第4回: 9月28日(金) 19:00 〜 21:00
○テーマ:「創造的な福祉社会に向けて」
○講師:広井良典千葉大学法経学部総合政策学科教授)

開催まで残り2週間を切りました。
また書評をアップ致しますので、お楽しみ!

第3回目 「人口減少と日本経済の進路」にお越しいただきありがとうございました!

09/07に講演会:少子高齢社会の未来図 第三回 「人口減少と日本経済の進路」を行いました。

30名を超える人数の方が足を運んでいただき大変盛況なぶりとなりました。

次は第4回 「創造的な福祉社会に向けて」に向けて精進致します。
引き続きご贔屓に!

秋田市のエイジフレンドリーシティに関する取材レポート

いよいよ第三回講演会の日付が迫ってきました!
今回の講師である藻谷氏は全国津々浦々に足を運び地域経済のリアルな側面をしっかりとつかんでらっしゃるエコノミスト
(市町村の99.9%に訪問したことがあるとのこと)

気になった方は講演会へ
第3回: 9月7日(金) 19:00 〜 21:00
 「人口減少と日本経済の進路」
  藻谷浩介(日本総合研究所調査部主席研究員)

開催場所
〒101-0035 東京都千代田区神田紺屋町5 T.M ビル2階
TEL/FAX: 03-3253-9870

アクセス
● JR神田駅東口・南口から徒歩5分
● 地下鉄銀座線神田駅から徒歩5分
● JR総武線快速新日本橋駅から徒歩5分
● 地下鉄日比谷線小伝馬町駅新宿線岩本町駅
半蔵門線三越前駅から徒歩10分前後

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以下、上石君の秋田訪問レポート。
地方での高齢化の現場の状況が知りたい方は是非読んでみて下さい。

以下転載
47都道府県の中で最も高齢化が進んでいるのは秋田県であり、2011年現在の高齢化率は29.7%です。現在20.6%の東京もやがてそのようになると予想されるため、秋田県は高齢化に対応したビジネスや街づくりの先進地域として注目されています。例えば、高齢化対応に熱心なセブンイレブンは2012年に初めて秋田県に進出しましたが、その目的には高齢化に対応した小売店の研究があると言われています。その秋田県の県庁所在地である秋田市は最近、WHOと協力して日本の自治体で初めてエイジフレンドリーシティ構想を打ち出しました。これがどのような取り組みか調べるために、秋田市役所の担当の方にお話を伺ってきました。


【エイジフレンドリーシティ構想に関して】

Q.エイジフレンドリーシティとは何ですか?

A.エイジフレンドリーシティとは、「世界中の高齢者に優しい都市」という意味の言葉です。「全ての人に優しい都市」という意味と誤解されることがありますが、あくまで高齢者に優しい都市を意味します。特に重要なのは、(1)市民参画や雇用などで高齢者が支える側にまわる、(2)社会システムを高齢化に対応させる、という2点です。WHOが2008年にエイジフレンドリーシティに関するプロジェクトを発表し、そのネットワークに100都市以上が参加しています。中には、国単位で参加している地域もありますが、日本からは唯一秋田市が参加しているだけです。


(公式HPより補足)エイジフレンドリーシティとは

「高齢者にやさしい都市」という意味です。エイジフレンドリーシティは世界的な高齢化・都市化・都市の高齢化に対応するために、2007年、WHO(世界保健機関)のプロジェクトにおいて提唱されました。WHOでは、世界各国で実施した聞き取り調査結果から、高齢者にやさしい都市かどうかは、8つのトピックについての検証が必要であると示しました。さらに具体的な検証を行うため、8つのトピックごとに84のチェックリストも発表し、それぞれの都市が自己診断ツールとして活用することを推奨しています。

【8つのトピック】

1.屋外スペースと建物

2.交通機関

3.住居

4.社会参加

5.尊敬と社会的包摂

6.市民参加と雇用

7.コミュニケーションと情報

8.地域社会の支援と保健サービス



Q.日本は高齢化先進国のはずなのに、世界的な高齢化対応プロジェクトへの参加は遅れているわけですね。どうして他の自治体は参加していないのでしょうか?

A.日本の他の自治体が参加できないのは、英語が壁になっているからだと思います。WHOとプロジェクトを進める場合、ジュネーブの担当者と英語でやり取りする必要があります。もちろん秋田市も英語が十分にできる体制とは言えないのですが、何とか進めている状況です。また、ご存知の通り、老年学の専門家が日本に少ないのも、プロジェクトに参加している市町村が少ない理由の一つです。加えて、このプロジェクトは国から数値目標が示されるのではなく、市民と一緒になって自分達の手で計画・実施・検証の仕組みを作る必要があるので、それも他の市町村が参加しにくい要因かもしれません。


Q.高齢化対応の取材にあたって、英語が自治体政策の壁になっているとは驚きでした。逆に、どうして秋田市は困難なWHOのプロジェクトに参加できたのでしょうか?誰かリーダーシップを発揮した方がいるのでしょうか?

A.現在の秋田市長がエイジフレンドリーシティ構想を掲げていたことが、秋田市がWHOグローバルネットワークに参加できた理由です。秋田市長が医療系の家系だったので、このプロジェクトを発見することができました(補足:穂積志秋田市長の父親は、ターミナルケアの先駆者として秋田県内初のホスピス病棟を設置したことで知られる外旭川病院を運営する医療法人惇慧会の会長理事として知られている。そのため、現在の市長も老年学の知識があり、高齢化対応にも熱心なのだと推察される)。


Q.WHOグローバルネットワークに参加すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

A.WHOからの客観的な意見がもらえること、他の都市とのネットワーキング(情報交換)、ポジティブな形での秋田市のPR、という3点がメリットです。


Q.現段階ではどのような行動計画がありますか?

A.現在、計画に参画する市民を募集している段階のため、まだ具体的な行動計画はありません。


Q.エイジフレンドリーシティ構想を初めとして、高齢化をポジティブな形で捉えようという動きが全国であるように思います。私もその一人ですが、具体的に高齢化のどこがポジティブかと尋ねられると、なかなか答えにくいものがあります。実際に、秋田で高齢化のメリットを感じることはありますか?

A.正直、まだ高齢化のメリットが見つけられないでいます。ただし、高齢化の事例をデータにして、市民に普及することで、意味があることを残せるんじゃないかと思っています。団塊の世代が高齢者の仲間入りをすると、また変わってくるんじゃないでしょうか。


Q.逆に高齢化で困っているのはどのような事柄でしょうか?

A.医療費の財政負担が大きくならざるを得ないというのが一番の問題です。次は、より元気に地域で暮らしていけるようにするか。全国的には、買い物弱者の問題が取り上げられてて、対策が必要だという声がありますが、突出してそれが課題になっているわけではありません。高齢者が若い人の車に乗せてもらって買い物に行けたりして、買い物弱者の問題は統計で把握しにくい部分があります。また、地縁が薄れているのも問題です。秋田独自の事柄としては、雪問題が大変です。冬場雪に閉ざされるため、雪かきは大変なのですが、高齢者の手だけでは厳しい部分もあります。


Q.東京では高齢社など高齢者の人材派遣を行う会社が出てきていますが、高齢者の雇用に関しては何か動きはありますか?

A.若者の失業が一番注目されているため、高齢者の雇用問題はこれからです。この問題を進める際には、生活のために働かざるを得ない高齢者と、趣味やボランティアのために働く高齢者を区別して考える必要があると思います。


Q.秋田は高齢化の先進地域ですが、どのような方から取材を受けることが多いですか?

A.自治体から電話をもらうことがある他、医療関連団体や企業からも問い合わせがあります。また、見守りサービス、タブレットの配布、などを高齢化に関連する商品を営業しにくる人もいます。海外だと、台湾、香港、韓国などからも取材があります。行政の役割が似ていて、欧米より聞きやすいようです。



<取材の感想>

取材に行った秋田市庁では、平成24年4月から「介護・高齢福祉課」が「長寿福祉課」と「介護保険課」に分かれており、高齢者向けサービスに必要な人手が増え続けている(=同サービスへの需要が増えている)という印象を受けました。自治体や海外からの問い合わせも多く、高齢化に対応した行政・街づくり・社会システムに関する需要は相当強いようです。一方、エイジフレンドリーシティへの日本からの参加自治体は秋田市のみ、老年学の専門家が少ない、英語が壁になっている、など供給面では高齢化対応を推進するための組織・知識・人材が不足しているように思います。秋田市のように老年学の見識のあるリーダーが高齢化対応を推進することで、高齢化に対応した社会システムが日本に築かれることを願うばかりです。